2機のAIが協業し受注製造業の工程設計から工程計画まで全フローを自動化するアプリのβ実証を開始
工場DXソフトウェアを開発するものレボ株式会社(本社:京都市中京区、代表取締役:細井 雄太)は、受注製造業向けに、AIが図面を読み取って製造に必要な工程順と工数を設計し、これを別のAIが受け取って工程と作業者に対して最適な工程計画を立案する技術を開発しました。このたび、2024年8月1日からこの技術をβ版として公開し、複数の製造現場にて実証を開始したのでお知らせします。この技術は、クラウド工程管理「ものレボ」の新機能として一般公開予定です。
■開発の背景
多様化が進むグローバル市場の変化を受け、製造業は少量多品種化・短納期化が加速しています。これを受け、世界各地で少量多品種・短納期の部品供給ニーズに追従できるサプライチェーンの構築が急務となっております。例えば、宇宙防衛産業の成長が著しい米国においては、少量多品種の精密機械加工部品の供給がボトルネックになりつつあります。少量多品種製造は物量の多い量産と異なり、製造やサプライチェーンの管理は属人的に行われる傾向があり、ノウハウの承継が難しく、慢性的な経験者不足が問題となっています。
当社は2016年2月の創業当初より一貫して、受注製造の多い少量多品種・短納期の部品供給ニーズにも追従可能なフレキシブルなサプライチェーンの実現を目指してきました。当社の強みである生産技術とAI技術を活かし、「まずは工場業務を丸ごとデジタルによって効率化・標準化し、デジタル上で工場をつなぐことで前代未聞のフレキシブルなサプライチェーンを構築する」という独自戦略を掲げ、技術開発およびサービス開発に取り組んできました。
2019年1月には、少量多品種製造現場の効率化・標準化のための工程管理SaaS「ものレボ」を販売開始し、2024年7月現在までのべ200社以上のお客様の製造現場の収益向上に貢献してきました。このたび、さらなる製造現場の収益向上と将来のサプライチェーンの構築に向け、製造現場における業務フロー全体をAIによって自動化する技術のβ版を公開し、実証を開始しました。この技術により、経験者不足の状況下における製造現場の管理業務の省人化を推進するだけでなく、継続的な収益性の向上を実現することができるようになります。
■提供価値:製造現場の実態に合わせて学習するAIが収益性の向上を実現
少量多品種製造業は受注製造が多い傾向にあります。例えば、精密機械加工業の製造現場における業務フローの一例は下記のとおりです。
- 工程設計
顧客より案件毎に図面を受領し、ベテランの管理者が製造に必要な工程順と工数を決めて原価を算出し見積を作成します。 - 製造(計画)
案件を受注すると、ベテランの管理者が製造現場の状況を把握し現場との調整を入れつつ工程や作業者の作業計画を立案します。 - 製造(実行)
作業者は日々の計画どおり各工程で製造を実行する。トラブル等で遅延が発生すれば、管理者は各案件の進捗を把握した上で都度計画を再調整します。
案件毎に工程順と工数を正しく算出するにはかなり経験が必要です。さらに納期の異なる案件が日々製造現場に入ってくる中、全案件が滞りなく製造できるように管理するにもかなりの経験が必要です。このため、経験豊富なベテランの管理者1名に毎月数百件の案件が集中することが常態化しています。そして、ノウハウ継承の時間確保もままならず、製造現場の管理業務における経験者の人手不足が深刻な問題となっております。
当社が開発した2機のAIは、工程設計と製造計画をそれぞれ自動化し、業務フローに沿って協業します。そして、AIが出力した内容に対するベテランの管理者による修正実績や製造実績など、業務フロー全体の実績データをリアルタイムにAIにフィードバックして学習させることで、製造の実態に合わせて高精度かつ効率的な計画を立案できるように、AI自身が業務フロー全体で改善し続けることが特徴です。これにより、製造現場における継続的な収益性の向上を実現します。
■新技術:ベテラン同様の思考プロセスで製造現場に寄りそうAI
当社のAIは、当社の生産技術の知見と実証にご協力いただいた製造業のベテランの管理者による協力の元で開発し、ベテラン管理者と同様の思考プロセスで人間に近い出力ができるようになりました。
AI一号機は、図面を読み取って工程順や工数を算出し工程設計を行います。工程設計は2つのプロセスで実行します。最初のプロセスではニューラルネットワーク(深層学習)を使い、ベテランの管理者同様に図面情報を整理します。次のプロセスでは別のニューラルネットワーク(深層学習)を使い、先のプロセスで整理した情報と過去の経験を元に、自社のどの工程をどの順番でどのくらいの工数で製造するのか出力します。(現在、AI一号機が読み取りから工数出力まで対応可能な図面は機械加工部品に限定されます。)このようにAI一号機は、ベテランの管理者と同様の思考プロセスで、自社の製造実績に沿った工程設計および原価の算出が可能です。
AI二号機は、AI一号機やベテランの管理者が出力した工程設計を元に、製造現場の状況を加味しながら、工程や作業者の最適な作業計画を出力します。各工程や各作業者のリアルタイム稼働状況や過去の実績を元に、ニューラルネットワーク(深層学習)を使い、工程と作業者が最適に動ける工程計画を立案します。さらにAI二号機は、ベテラン管理者同様に、段取り時間が少なくよう似た加工案件を固めたり、夜間や週末に自動機が効率よく動けるようにするなど様々な条件を設定して思考することで、製造現場の実態に合わせて工程や作業者が最も効率よく作業できるような計画が可能です。
■今後の展望:2機のAIを活用した世界初のサプライチェーンの自動構築
当社は今後、今回開発した2機のAIをさらに改善し応用することで、少量多品種のオーダーメイド部品の短納期調達を実現するための世界初のサプライチェーン自動構築技術の開発に取り組みます。
この技術は、急ぎで製造を依頼したい図面があるが、空いている工場が見つけられずに困っている技術者などが、図面をアップロードするだけで、調達ニーズに合うちょうど空きのある工場で製造を実行し部品を供給することを実現します。AIはアップロードされた図面を読み取り、当社のAIを利用する多数の工場の中から過去の製造実績・保有工程・作業者の空き状況等を加味した上で、図面および要求事項に沿った製造が可能な最適な工場を選定します。
上記のように、図面毎に原価と納期を正確に予測し実行できるので、相見積もりを取ることなく素早く専用のサプライチェーンを自動で構築し、調達側は調達ニーズを満足でき、供給側は空いた時間を売上に変換することが可能になります。
この技術開発における実証実験の一つに、精密機械加工品の供給がボトルネックとなっている米国の宇宙産業の精密機械加工品の調達課題解決に向け、日本の中小製造業の余剰生産能力を活用するという実験を2024年~2025年にかけて計画しています。
当社の実証実験に対し、ご取材、ご支援、ご協力についてご興味をお持ちの方は是非当社までお問合せ下さい。
■当社について
当社は、日本が誇るトヨタ生産方式などの製造ノウハウを応用し実践してきた生産技術者が、産業革命と呼ばれることをすることを目的に創業した日本のスタートアップです。未来のサプライチェーンをつくることをミッションに、創業当初より生産技術とソフトウェア技術を高度に融合させた製造現場に根付いたソフトウェア開発をしております。
ものレボ株式会社
- 本社所在地:〒604-8277 京都府京都市中京区三坊西洞院町572
- 代表者:細井 雄太
- 事業内容:製造業向け工程管理ソフトウェアの開発・販売
- 創業:2016年2月
- 資本金:1億円
- Webサイト:https://monorevo.jp/
- 電話番号:075-585-5097
■本プレスリリースに関するお問合せ先
- 担当:細井
- メールアドレス:info@monorevo.jp